6Vモンキーにハンターカブ50エンジンを搭載


パーツが入手困難で維持がとても難しいエンジン。
もう動かすのではなく観賞用エンジンとして楽しむしかなさそうだ。


『え?CT110ハンターカブエンジンってモンキーに載せられないはずじゃないの?』
待て慌てるな。それは孔明の罠だ。

これはハンターカブ専門サイトでもあまり語られる事の無い
CT50 ハンターカブ「50」エンジンである。


エンジンのボロボロだった頃の写真は撮ってなかったよ


もう現存する車体が少ない貴重なハンターカブ50。
1968年頃生産されていた骨董品だ。



画像はヤフオクから拾ってきたんですけどね。


エンジンを普通のカブ用に載せ換えた
程度が悪い車体も多いので、買う時はよく確認しよう。

それとも当時から副変速機無しモデルもあったんだろうか?
CT110にはそういうのもあるらしいが、管理人にはわかりませぬ。

もう部品の入手が困難で、特にスプロケがもう手に入らないので
このエンジンで普段乗り回すのはもう無理だろう。 あくまで観賞用ですな。




【エンジン解説】

副変速機付きカブ系エンジンの中で
唯一スプロケットの位置がカブ・モンキーなどと同じハンターカブ50エンジン。
つまりモトラやハンターカブ110のようなチェーンライン問題が無い。

バリバリ荒野を走れるモンキーになるのか?
副変速機は男のロマンでございますよ。
ジェネレーターカバーの蓋のOリングも欠品。


それじゃあまず普通にエンジンをオーバーホール+レストアしましょうかね。

※今回のエンジンレストアは、どれくらいの部品が6Vモンキーの物でも
問題無く流用できるのか?をテーマに行うよ。

1968年のエンジンだから、部品によっては
その後の6Vエンジン全般と細部が違う部分もあるのだが、だいたい流用できる。

特にM5のネジは「旧JIS規格」で、ネジピッチが現代と違ったり
遠心クラッチも設計がちょっと違う。

まあそのへんも説明しながらいきますよ。

部品取りエンジンとしてジャンクのダックスエンジンか
Sクランクのモンキーエンジンなんかがあると最高ですよ。


【モンキーに搭載するために用意する物】

今回のベース車・Z50J-135XXXX JZ後期遠心3速モンキー



エンジン CT50 「ハンターカブ50」 エンジンナンバーCT50E-182864

モンキーに搭載するために必要な部品
●モンキー用Sクランクジェネレーターベース
●リアスプロケット40丁


これはハンターカブ50のジェネレーターベース
配線の数が5本で、赤が一本余計。 このままではモンキーハーネスに使えない。
コイルをほどいて巻き直す技術がある人はいいが、モンキー用に交換したほうが楽。


画像はモンキーJZ前期エンジンから取ったジェネレーター一式
配線が4本の奴のジェネベースを使う。


同型ジェネレーターベースは他にDAXなどからも取れる。

4Lモンキーからのを取るには
ニュートラルランプ用の若葉/赤の配線が付いてないので
一本追加すれば使用可能。


フライホイールはハンターカブ50のをそのまま使おう。


もしフライホイールも使わなきゃならない場合は
車種によってフライホイールに点火タイミングの角度が違う物もあるので注意。

今回のハンターカブ50のフライホイールは4Lモンキー/JZ前期モンキーと同じタイミング。


状況に応じて配線加工・補修用のカプラ類はこちら

配線ドットコム

ここは歴代モンキーのハーネス修理に必要なカプラが8割揃ってる。

今回のジェネレーターの配線補修には「4PM250K」を買いましょう


【ハンターカブ50のクランクケースのひみつ】

エンジンナンバー側
副変速機のオイルの通り道の穴が二個開いている。

カムチェーンテンショナーはただの棒とバネなので(後述)
テンショナーボルトの穴は存在しない。

もう40年近い前のエンジンですよ( ゚д゚ )


6Vモンキーエンジンとどう違うかわかるかな?


センタークランクケース左右・ミッションのメインシャフト、カウンターシャフト、ギアーシフトスピンドル、
副変速機一式はハンターカブ50専用なので壊しちゃったら終了。

他は何とかなる。




【カムチェーンテンショナーのひみつ】
本当に何の仕掛けもないただのアルミ棒とバネだけ。



こんなので本当にカムチェーンを押さえられるのかね?
このタイプのテンショナーが使われている古いカブ系エンジンを分解してみると、
ほぼ全てのエンジンにシリンダーとヘッドの上下にカムチェーンが接触して削れた痕がある。

ぶん回すのは危険な設計だなあ。




【ハンターカブのミッションのひみつ】
シフトドラム・ミッションの各ギア類は遠心モンキーのそれと同じなので補修に使える。
カウンターシャフト・メインシャフトだけは見ての通り専用品だ。

両方とも、シャフトの先端にらせん状の溝が掘ってあるのは
回転を利用して副変速機にオイルを循環させるためだ。


ミッションのシャフトにはオイルを通すために穴が貫通している。
シフトフォークとシフトドラムも部品番号・外観の細部の違いはあるが
6V遠心モンキーの部品と互換性があるぞ。
画像のは新品のシフトフォークを組み付けた状態。



ミッションを組み付けた所。 クランクシャフトも普通のSクランクシャフト。
キック一式も遠心モンキーと同じAキック。


反対側のケースも取り付けてと
オイルポンプは6Vモンキーなどの物に交換しよう

なぜか?

〔ネジの旧JIS規格〕

今のネジは、規格で5ミリのネジのピッチは0.8ミリだと決まっている。
ハンターカブ50エンジンの頃は まだ旧JIS規格の時代でネジピッチが0.9ミリなのだ。
だいたい1970年代はじめあたりにネジ業界の規格が
現行の規格になったのさ。

だから補修でネジを交換するにも、ネジの入手が大変だ。
そんなわけで 0.8ミリピッチの時代になってからのオイルポンプを付けた方が色々と楽。

このへんの話は 「旧JIS規格」「ISO規格」で検索して調べてみようね。
(ネジピッチって何?ってレベルの奴は出直して来い)

この旧JISの罠はこの後クラッチとカムシャフトにも登場するぞ。


昔の人やクラシックカー乗りには常識かもしれないが
旧JISのM5ピッチ0.9のネジ穴に今の規格のM5ピッチ0.8をねじこんでも
きついながらも一応ねじ込めてしまう。


「…なんだかきついな…」と気付いた時にはもう手遅れ。
ネジもネジ穴もすでにダメなっているので1970年以前あたりの
大昔の乗り物を直す時にはネジには特に気を付けないといけない。




画像の赤い丸で囲んだ部品は旧JISのM5ボルト及びネジ穴が使われている部品
せっかくなので交換したほうがいい

2007年現在どれも中古で比較的簡単に良品が手に入るはず。
マニアが余らせる部品ばかり。

※これら旧JIS部品は部品番号が統合されているので
今注文してもM5ネジ物は全てピッチ0.8の物が来ます。


M5のリコイルで各部品のネジ穴を作り直すという手もあるが
加工箇所が多いので、お金と苦労を考えたらやるだけ無駄。



この頃のカブ系エンジンのオイルポンプはプラスネジじゃなくて
普通のボルトで留められているのが普通。

あまり強く固定しなくてもいい部品なのに
必要以上に強くボルトを締めてネジ穴を壊す奴が続出したから
今みたいにプラスネジに変更になったのかな?

まあM6ネジに変更は無いからどっちで固定してもいいよ。




【ギアーシフトスピンドルも専用品】
上が普通の遠心モンキー用 155ミリ
真ん中はセル付きの12Vカブ用 170ミリ
下がハンターカブ50用 178ミリ

ハンターカブ50用は欠品だが
もしもスピンドルが破損していた場合、エンジンをハンターカブ50に載せないのであれば
どうせシフトペダルも交換するので、セル付き12Vカブのでとりあえずは代用できるだろう。
あくまでもとりあえずね。

ハンターカブ50のは右側にワッシャーが付いてるけど気にしない。
4Lモンキーのもこうなってる。 設計見直し後に不要になったんだよ。




【遠心クラッチの罠】

ハンターカブ50の遠心クラッチは、6V遠心モンキーなどよりも古い設計で、各部が違う。
※写真右下のクラッチ板一式は新品


左のクラッチセンターとドライブギアーアウターの形が面白いでしょう。

絵だとわからないが、ロックナットとゆるみ止めワッシャーも今のに比べて小さい。
だからみんなのクラッチロックナットレンチのメーカーによってはサイズが合わない物があるかも。

そして「OUT SIDE」の刻印がある、あの特殊ワッシャーはまだ使われていない。

整備の時は現行のロックナット一式を入れようね。
ロックナット/OUT SIDEワッシャー/花みたいな爪の固定用ワッシャーの3点セット


※図に無いクラッチ部品はモンキーと同じと思っていい。


ドライブプレートとクラッチアウターに使われている
5ミリのネジは、これも旧JIS規格なので
二つの部品の外観は全く同じだがモンキーの物と交換する。

左が部品取りから使うモンキー用 右がハンターカブ50の物
見た目は全く同じだが、使うネジのピッチが違う。

ドライブプレートとクラッチアウターを モンキーの物に交換したら、クラッチを組み立てよう。

スプリング類・クラッチ板一式はモンキーの物と共通。



「ハンターカブ50のクラッチセンターの部品が壊れてるよう…」
「古い設計のクラッチセンターとか何だかよくわかんないけどめんどくせーよ!」

そんな人は、遠心モンキーのクラッチをまるごと付けちゃってOK。
これはおなじみ遠心モンキーのクラッチ一式。

ハンターカブ50に使うには何の問題も無い上に、むしろ色々と整備しやすい。

※見た目はそっくりだが6Vのカブやシャリーの遠心クラッチは使えない。
6V遠心モンキーや今回のハンターカブ50はプライマリードリブンギアの歯数が67対18だが
シャリーやほとんどの6Vカブなどは69対17だからだ。


今回は旧JIS物はモンキーの物に交換して、中身は旧型遠心クラッチで作ったが
組んじゃうと見た目はおなじみの6V遠心クラッチ一式と同じにしか見えない。




【カムシャフトも】
左はハンターカブ50 右は遠心モンキーの物

見た目やカム山や各部の寸法も同じだが、これも旧JISの5ミリネジなので
ついでに交換した方がいいだろう。

旧JISのこのボルトは、大昔のカブ系の純正流用ハイカムなんかに
使うらしいから、重度のマニアにあげると大喜びらしいぜ。




【古いタイプのバルブ】
蛇足知識なので読み飛ばしても構わない。

ハンターカブ50専用品というわけではない この頃の標準

この頃のカブ系エンジンは、この旧タイプのバルブが使われている事がある。
ちょっと重く、ちょっとだけ軸が短い。 ウエストの形状の違いが面白い。
軸がちょっと短くても性能には何も関係は無い。

バルブの傘の直径が若干大きく見えるが、当たり面の位置に違いは無い。
でも新品バルブを使うなら内燃機屋で合わせてもらったほうがいいかもね。
どうせ古くて虫食いだらけになってるだろうし。


シリンダーヘッドの部品構成は、4Lモンキー/JZ前期モンキーエンジンや
ダックス50、シャリーなどの一般的な6V/50CCヘッドと性能・寸法・部品は共通なので
刻印や細部の形状にはこだわらない人はヘッドを丸ごと補修用に使ってもいい。
ポート径が15ミリのヘッドで、同じカムならどのヘッドでも同じ。

管理人が所有するハンターカブ50エンジン3つのうち、二つは普通のマイナス溝の6Vバルブだったが
ひょっとしたらすでにバルブを交換されていたのかもしれない。




ジェネレーターはモンキーの物を使用。
ハンターカブ50はジェネレーターからの配線が5本なので
モンキーに使うためには赤い線が一本多いのだ。

フライホイールは共通
スプロケは専用品 もちろん欠品 限界が近い磨耗ぶり
 

 
ジェネレーターカバーと副変速機
フライホイールの蓋のOリングパッキンももう欠品


副変速機のカバーの裏側

Oリングとサークリップは今でも出る  他車と共通だからね。

カバーをクランクケースに取り付け
副変速機のレバーとツメを組む。
ツメとクリップは2007年の時点でまだ買えた。
矢印のM6のボルトは副変速機の中のオイルを抜くドレンボルト。
あまり使う事は無いと思うんだがなあ。


副変速機を組み立てて


今40年の時を経て蘇った( ゚∀゚)ノ











…で

エンジンは一応完成したが、実はこれで終わりではないのだ。

6Vのカブやベンリィなどに載せる分にはこれでいいのだが
モンキーのステップがこんな形状なので副変速機のレバーをHにする事ができない
それなりの改造をしなきゃいけませぬ。

この「サブチェンジアーム」の三日月の穴の角度を変えた物をアルミ板から自作する。
右が作った物。 何個か失敗してもいいから丁寧に作ろう。
精密棒ヤスリセットとドリルだけで作った。 特別な専門工具は使っていない。


取り付けると矢印の範囲でレバーが動くようになる。
この工作をやらずに、モンキーに載せるためなのだろう
レバーが曲げられたエンジンもよくある。 

もうレバーも欠品。 2007年現在サブチェンジアームはまだ出た。

この工作がうまくいけば完成ですよ。
元のサブチェンジアームは無くしちゃダメですよ。
そのうち出なくなりそう。




【総合性能解説】

Hでの最高速度55km/h
Lでの最高速度30km/h

フロントスプロケット13丁(交換不可)   リアスプロケット40丁


「H」の乗り味は、当然だがフルノーマルの非力な遠心3速モンキーそのものだ。
「L」でのトルクは、確かに「H」よりはあるのだろうが、別にグイグイというわけでも無く、
あっという間にエンジンが吹き上がり切り、「L」はとても使い物になるとは思えない。


エンジンがハンターカブ50の、その大きな車体に載っているのなら
エンジンの実力が発揮できるのかもしれないが
ハンターカブ50に乗った事は無いから何も言えないけども。 

…こんな非力なエンジンでハンターカブ50の車体を引っ張れたのだろうか。
それともキャブレターに秘密があったのか…?

ちなみにハンターカブ50のメーターは80km/hまでシフト域が刻まれ、
最高100km/hまで刻まれている。



ハンターカブ50の純正リアスプロケットは44丁。
モンキー以外の車体に載せる人もいるだろうから
参考に書いておく。




【最後に】

とにかくこのエンジンは維持が大変難しい。
付き合っていくには、かなりの知識とお金と情報が要るだろう。

もっと詳しく知りたい人はパーツリストを買ってください。
ホンダに注文すれば複製版が買えます。

とにかく素人には全くオススメできない。

日常の足として使うには非常にもったいない。

あくまでも観賞用やイベント、話のネタとして楽しむべきだろう。


中華ニセエンジンメーカーがデッドコピー作ってくれればなー。 スプロケ取れるのに。




雪の中を駆け抜けろ!
といっても、雪ではスピードが出せないし、
滑るから何の意味も無いわけで。

エンジンガードはホンダアクセス製。

エンジンアンダーパイプ(クロームメッキ)
08P51-GCV-000
\5,250  (2004年現在)

2012年現在絶版

かつてモンキーバハ用に販売されていた物と同じ形。
中古で買う時は付属のスペーサーが3つちゃんとあるか確認しよう。
ステップのスペーサー2個の厚みは9ミリです。




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